新刊


◉ 『生き方としての哲学: より深い幸福へ――

 アドー、コンシュ、バディウと考える』

 (2025年11月7日刊行)

Kindle版

ペーパーバック




ISHE出版(アイシー出版)からの最初の刊行物は、フランス語のテクストを読み哲学する「ベルクソンカフェ」で取り上げた3人の現代フランスを代表する哲学者――ピエール・アドー(Pierre Hadot、1922~2010)、マルセル・コンシュMarcel Conche、1922~2022)、アラン・バディウ(Alain Badiou、1937~)――の著作から見えてきたテーマについてまとめたエセー『生き方としての哲学: より深い幸福へ――アドー、コンシュ、バディウと考える』です。

 

目次:

はじめに

第1章 ピエール・アドーによる魂の鍛錬

 1.魂の鍛錬

  1.1. 生きることを学ぶ

  1.2. 対話することを学ぶ

  1.3. 死ぬことを学ぶ

  1.4. 読むことを学ぶ

 2.生き方としての哲学

第2章 マルセル・コンシュの形而上学

 1.コンシュが書き残したもの

 2.2006年にコンシュが語っていたこと

 3.哲学者とはどういう人間なのか

 4.無限から自然主義的形而上学へ

 5.縮小された時間と果てしない時間

第3章 アラン・バディウが考える幸福と反哲学

 1.バディウとの最初の出会い

 2.『真の幸福の形而上学』を読む

  2.1.哲学と哲学の欲求

  2.2.幸福によって試される哲学と反哲学

 3.出来事に忠実に向き合うということ

第4章 生きること、哲学すること、そしてより深い幸福へ

 1.生きることと哲学すること

 2.「生きられた確信」(convictions vécues)

 3.意識と幸福の3層理論

 4.時間の捉え方と幸福

おわりに 

 

アドーが古代哲学の中に見た「生き方としての哲学」の視点から3人の思想を読み直し、そこから浮かび上がる幸福との関係について、著者の幸福論も交えながら論じます。さらに、AI時代を生きるわれわれにとって鍵となる新しい生の方向性についても考えます。なお本書は、マルセル・コンシュについての論考を含む日本初の著作になるかもしれません。この中にある現時点におけるコンシュ評を以下に引用いたします(p. 64-66)。


 コンシュには声を荒らげたり、派手に訴えかけたりするようなところは全くない。静謐な空気のなかでしっかりと地に足をつけ、思考がどこかに逃げていかないようにすることだけに全神経を集中している、そんな風情がある。したがって、読む側も同じように静かな内的空間を準備し、厳密に思考するという心構えがないとコンシュの世界にはついていけないかもしれない。わたしが科学者のままであろうとしていたなら、全く反応しなかったであろう哲学者である。このように自らに誠実で根源的であろうとする抑制された思考にそれまで出会ったことがなかった。その静けさと誠実さに深いところで打たれ、それまで自分のなかにはなかったものが入ってきたという明確な刻印を残すことになった。その過程で、個別の知識ではなく、思考するとはどういうことなのかについて学んでいたことに気づいたのである。アドーに肖って「読む」ということを考えるとすれば、著者の思考過程(Gedankengang)を精確に、厳密になぞりながら追体験し、そこに論理のつながりの乱れがないかを確認する誠実な作業である、そう言いたくなるようなコンシュ体験であった。振り返ってみれば、そのことを教えてくれる哲学者は他にいたのかもしれない。しかし、わたしにとって、それはコンシュだったのである。そこに、偶然のなかに現れた必然を見ることができる。

 

お手に取ってお読みいただければ幸いです。

(2025年11月9日)


本書に寄せられたコメント


★★★★★ 心の奥底に深い刻印をもたらす一冊です T.S.
本書は、古代から現代に至る哲学的知恵を「生き方」として再構築し、幸福の根源を探ろうとするエセーです。ピエール・アドー、マルセル・コンシュ、アラン・バディウという現代フランス哲学の三巨頭の思索を足掛かりに、哲学を単なる学問ではなく「生きるための哲学」としてとらえ、彼らの思索の道程をたどりながら真の幸福とはどのようにしてもたらされるかを読者と共に考えてみようとするエセーです。深い内容の思索を僅か121頁のエッセンスとして簡潔に示してくれています。
著者は免疫学の国際的な科学研究者でありしかも哲学者です。サイファイ研究所ISHE(Institute for Science for Human Existence)を主宰し、科学と哲学と人間の存在について、4つのフーラムとカフェをここに設けて、科学者や市民の方々との哲学的な対話を続けています。本書は、そのうちのベルグソン・カフェで、参加者と三人の哲学者のフランス語の原文を読みながら対話し、それを背景として「哲学は学問」ではなく「哲学は生き方」であるという古代的哲学の視点を現代に蘇らせ、そこから見えてきた思想のかたまりを「生き方としての哲学」としてまとめたものです。
哲学は無限を基底とした「精神の鍛練」、「存在の問い」であり、「真理の探究」によってより深い幸福へと帰結していくという道筋が示されています。読者にとっての大きな魅力は、難解な哲学を「日常の生き方」へと引き戻そうとしている点でしょう。それは哲学を専門的研究から解放し、誰もが取り組める自分自身の生き方へとそして心の変容へと繋げようとすることです。そこには哲学を「いまを生きるための処方箋」として、そして「未来の生き方への羅針盤」とするためのエッセンスが散りばめられています。
AIという情報化時代を生きる私たちが、「より良い生き方とはそして真の幸福とは何だろうか」考えるときのヒントが見えてきます。若い働き盛りの方から時間に余裕のできたシニアの方まで、スマホとパソコンの手を休め、一度は手に取って静かな思考の時間を楽しんでいただくための本です。心の奥底に深い刻印をもたらす一冊となるでしょう。

 

(アマゾンカスタマーレビュー: 2025年12月4日)